TOP » 新型コロナウイルス感染症対策ブログ » 受験生の新型コロナ感染対策 知っておくべき7つのポイント
沖縄県那覇市にある日本消毒センターでは、新型コロナウイルス感染症(covid-19)対策に関する情報をブログで発信しています。
新型コロナウイルスは終息の気配を見せないまま、3ヶ月後には受験シーズンが始まります。
安心して受験に臨むために知っておきたい7つのポイントを検索しました。
公衆衛生や感染症を専門とし、文部科学省で学校での感染対策についての懇談会にも参加している国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治さんにお話を伺いました。
※インタビューは10月14日夜にZoomで行い、この時点の情報に基づいている。
ーーそもそも受験生の感染リスクはどんなものなのでしょう?
中学受験、高校受験、大学受験がありますね。
まず、中学受験をする小学校6年生の子どもたちは、成人と比べて比較的、感染から守られていることがわかっています。また、高校受験をする中学3年生までは人口当たりの感染者が少ないです。
インフルエンザの感染対策は必要ですが、新型コロナの感染からは守られているのがこの年代です。
残念ながら、高校生ぐらいからは新型コロナの感染者は徐々に増えてきます。
行動範囲も広くなるということもありますし、体が大人になっていく中で、新型コロナウイルスが体に入り込むレセプター(受容体)が増えるのではないかという説があります。
しかし、受験に向けて感染リスクのある行動を避けることでかなり抑えられるだろうと考えています。
受験を主にされる年代では重症化リスクも低いということも朗報でしょう
来年1月16日、17日に行われる大学入学共通テストの感染対策が、今後、より具体的な形になろうとしています。来年は55万人が受けます。この試験のあり方はモデルとなって、二次試験、私立の試験など他の試験にも影響するでしょう。
ーー受験生が気をつけるべき感染リスクの高い場所はどこなのでしょう?
今までのデータを見る限り、感染自体が少ない小学生、中学生でも、感染した場面としては家族内が多いです。症状は軽いのですが、濃厚接触者として検査したら感染していることがあります。
一方、学校の中でどんどん感染が広がっているという感じではなさそうです。当初想定したよりはとても少ないです。
1番リスクの高いのは家庭。次いで塾や学校でしょうか。受験生なら受験前の1週間、できれば2週間は念のために学校や塾に行かない。行ってもできるだけ3密の場面を避けることも選択肢かもしれません。
例えば、学校や塾に行くならマスクをして、しゃべる際には距離や換気を気にする、食事をするのも少し離れて食べる。高校3年生は実践してもよいかもしれません。特に地域での感染が拡大している際には。
感染リスクを下げるために、家族にも協力してもって受験前の1〜2週間は特に気をつけてもらうことが大事です。
同居家族が熱が出ていたり、感染を疑われていたり、発症して新型コロナと診断されたりしたとすると、家の中で距離を取ろうと言っても難しいですね。
きょうだいの間では距離を離せるかもしれませんが、父母は難しいかもしれません。受験の際にはいろいろと相談することもあるでしょうから。
家庭の中では距離を開けるにしても、トイレやお風呂は共用が多いです。もちろん、トイレやお風呂が感染拡大の場というわけではないですが、できれば具合が悪い人がいればトイレは分ける、お風呂は具合が悪い人は最後に入るなどができるでしょうか。
受験生をどう守るかは受験生本人だけでなく、家族とともに取り組むことになります。
ある自治体のデータですと、家族内で感染したのは2割程度でした。逆にいうと8割の家庭では起きていません。なお、このデータは受験生の年代に区切ったわけではありません。
しかし、いろいろと対策をすれば家庭であってもリスクは下げられるということです。
ーー具体的には家族は何をしたらいいですか?
具合が悪ければ、距離を開けて接触する機会を減らすしかないのです。また、もちろん基本は同居家族が自ら感染するようなハイリスク行動を取らないことが大事だと思います。
この感染症は、3密の場面、食事や飲酒をする場所や声を出す場所が感染のハイリスクな場になることがわかっています。
具体的には、1月16日、17日の試験を想定すると、受験生が「濃厚接触者」になるのはその前の2週間の間です。
つまり、新型コロナと診断された家族と最後に接したのが1月2日以降だと、理論上は濃厚接触者になり得ます。受験生は最大限の感染対策を行う期間になります。
心配だという方に極端な例を示すとすれば、1月2日から試験の間は家族間でも話す際にはマスクをする、2m程度あける。ご飯はなるべく一緒に食べない。そうすれば、家庭内でだれか発症しても濃厚接触者とはなりづらくなります。
家族も年末年始は忘年会や新年会などは避けて家庭にウイルスを持ち込まないように気をつけた方がいいかもしれないですね。
うつさない、うつらない家庭環境を作ることが目標です。リスクはゼロになりませんが、その後も長い受験レースがあるならば、リスクを下げる行動ができるようにしましょう。
ーー受験生自身は発症していなくても、感染者の「濃厚接触者」となった場合はどうしたらいいのでしょう? 一定の条件下で受験できることを決めたという報道もありました。
まずは、保健所に濃厚接触者であるとされないために予防が必要です。それでも55万人もいるとそういう人はでるかもしれません。そうした人も含めてきめ細やかに対策することは大事です。
新型コロナの流行があるため、今回、共通テストの日程は追試も含めると3日程あります。1回目で多くの受験生が受けることになっています。
1回目のテストの時に、保健所に「濃厚接触者」と言われる受験生はどれぐらいいるかと推定すれば、できるだけ減らして50人以下ぐらいにはなればと思っています。
多く見積もっても0.1%で500人、いやそこまではないだろうなと思います。つまり、受験会場1ヶ所につき1人いるかいないかになります。
もし保健所に「濃厚接触者」だと言われた場合は、私の意見としては無理せず2回目の日程で受けたらどうかと考えています。
2回めの試験は1月30日、31日にあります。そこでも濃厚接触、または感染したとなっても、2月13日、14日に追試のチャンスがあります。
1回目の試験は55万人のほとんどが受けるため、こうした対応においては多少混乱すると思います。朝、「昨晩、保健所から濃厚接触者だと言われました」と数が少なくとも電話がかかってきたり、その電話がなかなかつながらなかったりすることもあるかもしれません。
そうしたことから、もし濃厚接触者になった場合は、2回目の方が現場での心理的ストレスは少ないような気もします。もちろん、2回目だと会場は遠くなったりするかもしれません。
2回目の試験はぐっと人数が減りますから、試験監督も対応しやすい利点があります。
このあたりはまた文部科学省でもシミュレーションなどをして最終的に結論を出すしかないでしょう。
ーー診断は受けていないけれども、熱や咳がある家族がいて、受験生が家庭内で接してしまったという場合はどう考えたらいいですか?
その判断は難しいです。こうした細かいことについても考え方を示さなければならないでしょう。
「濃厚接触者」とこれまで表現してきましたが、私が言う「濃厚接触者」というのは保健所が認定した方になります。学校による自主的な判断による濃厚接触者は含まれません。
当初、「濃厚接触者」を企業や学校が決めるのは、保健所の負担を減らす意味では悪いことではないと思ったのです。しかし、医療者の判断を介さない濃厚接触者の特定は質に差がでます。
症状がないことが大前提ですが、学校側が「濃厚接触者」であるかどうかを判断するのは避けた方がいいです。
ーー受験会場での感染も気になりますね。
そもそも、入試という場面での感染リスクは低いです。
試験の日になったとします。公共交通期間で試験会場に行くでしょうけれども、そんなに感染リスクは高くありません。
会場も、少し密になる場所はあるかもしれませんが、席の距離も開け、マスクをつけて、座って試験を受ける時は基本的にしゃべらない。作成中の試験会場のマニュアルでもしっかり感染対策はたてています。
おそらく昼休みはお弁当を会場で食べるでしょうけれども、しゃべらないようにして食べて、試験会場側は換気を良くする。
試験が終わったらまた公共交通機関で帰る。それを2日間やるわけですね。
試験自体は面接もなければ、基本的に感染をコントロールできる場所です。ルールに従って動く場所なので、対策の実効性も高い。社会全体で1月16日、17日に試験をするのは、比較的リスクの低い行為だと思います。
ーー冬場であるということはリスクを高めませんか?
風邪やインフルエンザなど呼吸器感染症が広がりやすい要素があります。その中で一番感染リスクを高めるのは人と人との距離が近くなることです。
冬場はどうしても人と人との距離が密になる。イベントもクリスマスやお正月がありますし、寒いので換気も悪くなりがちですね。
9月の4連休の影響が2〜3週間して少しずつ出てきているように、1月16日、17日はお正月での行動の影響により感染者が増える可能性があります。地域によっては「緊急事態宣言」のようなものが出る可能性も想定されます。
このような宣言が出ていても、基本的にこの共通テストは都道府県をまたぐことはありません。受験生は地元で受けるから移動がない。
社会全体でこの多くの人が通る入試というイベントを応援してほしい。入試ができるようにそれぞれの地域で支えたいです。
ーー当日、万が一、体調を崩した場合はどうでしょう。もちろん試験を受けられないような体調なら仕方ないですが、ちょっと咳が出る、喉が痛むというようなレベルの症状がある場合、どう対応すべきですか?
これは難しいですね。
具合が悪い場合は申し出てもらう形になります。
基本的には、熱があれば来ないでくださいということにはなっています。でも、ちょっと咳が出る、ちょっと喉が痛いという場合、どうするかは難しい。
ーーその時は、運が悪かったと試験を諦めざるを得ない人も出てくるのですかね。
追試を受けるチャンスもありますからね。受験生にはピンチをチャンスに変えるぐらいの気持ちでいてほしい。もちろん、共通試験以外では、1回だけしかチャンスのない試験はあるでしょう。
当日、試験会場にサーモグラフィー(体温を可視化する装置)を使うかも議論になりました。受験の感染対策で私は不要というスタンスです。
今まで使ったことがない学校に精度管理ができるとは思えません。また、そもそも冬場なので、外気温に影響されます。寒いところから入ってきた時に正確な体温を示すとは思えません。精度管理が怪しくなります。
さらに、受験というのは感染リスクの高い行為をするわけではないですし、症状の自己申告もできます。咳などの目立つ症状があれば、試験監督が声をかけることもできる。
そういうことを考えると、そこに曖昧なサーモグラフィーを持ち込んで混乱を招くよりは、やらない方がいいと思います。
ーー都道府県をまたいだ受験をする場合、感染の多い地域から少ない地域に移動すること、またはその逆も考えられますね。
二次試験や私立大学の試験で、都道府県をまたぐ受験もありますね。その時に、受験生の住む地域と受験する地域がどういう状態になっているかによるでしょうね。
この冬をどう乗り越えられるかで、来年以降の対策が決まります。この冬が大変なことになると、来年以降も厳しい対策が必要になります。この冬はみんな慎重に過ごしてほしいという思いはあります。
その中でも、受験生の場合、都道府県を越えて移動しても、感染リスクの高い行動をとるわけではありません。飲み会をするわけではないし、親と一緒に移動するぐらいです。感染リスクは低い行為になります。
それができるように社会が応援してほしい。流行地域、仮に緊急事態宣言が出ている場所からでも受験生は来るなと拒絶することはしないでいただきたい。受験生はその分健康管理をしっかりしてほしい。
私は、受験というリスクの低い行動であれば、都道府県を越えることはできないわけではないと思いますし、優先してあげてほしいと強く願っています。
大都市は感染対策も慣れて来ましたが、感染者の少ない地方ほど、東京などに出張に行くと、戻った時に2週間自宅待機してくれなどというルールが設けられている場合があります。地方の受験生が東京で受験して、2週間、行動制限をかけられたら困りますよね。
流行地域に行くかどうか、流行地域から来るかどうかが問題ではなく、「そこで何をしたか」が問題なんです。受験をするという行為の感染リスクは低いことを忘れないでいただきたい。
「東京の受験生は地方に来てくれるな」という判断は合理的ではありません。受験生は受験という目的のために、感染対策を通常以上にしているはずです。社会の中で自らの行動を律しているはずなので、地域も温かく受け入れてほしい。
もし追加の対策をするとすれば、健康ダイアリーのように熱や体調を1日1回でも書き留めて体調管理をしておいたらいいと思います。
さすがにないと思うのですが、受験生に「PCR検査で陰性を確認してから来い」とか、受験生に陰性証明を求めるようなことはやらないでください。もちろん濃厚接触者に対しては、検査をすることが条件にはなるかもしれませんが。
過剰な防衛にならないように、入試というものをきっかけに冬の過ごし方を今から議論し、合意を作っておければと思います。
ーー本格的な試験シーズンまであと3ヶ月です。私たちはこの間、どんな準備をしておくべきですか?
受験生に関しては対策を事前に伝えておけば、しっかりやってくれると思っています。
追加するとすれば、「感染対策をうたった変なものを買わないで」ということでしょうか。心配した親に勧められて、なんとか水とか除菌装置とか怪しいものにお金をかけないでください。
感染対策としてかけるお金は1日100円までが目安です。マスクと消毒用アルコールがあれば十分です。
受験で重要な関係者は、
です。
特に試験監督の方々がこの3ヶ月間でしっかりとした感染対策をすることがポイントとなります。
中でも一番心配しているのは大学受験です。大学が今、一番オンライン授業をやっています。
医療系の大学の教員であれば、感染対策として、距離を置き、どうすればいいかはわかるでしょう。
しかし、共通テストは医学系の大学だけでなく、文系の大学の先生も試験監督を務めます。文系の大学でオンライン授業を積極的に活用している大学で入試をやるとすると、リアルな現場でいろんな課題が出てくる可能性があります。
リスクがきちんとわかっていない人が試験監督をすると、リスクを増す可能性があります。この3ヶ月間で、リアルな現場でどのように感染対策をすべきか、試験監督官も事前にきちんと理解しておく必要があります。
当日、具合が悪い人が来たらどうするのか、濃厚接触者と言われたらどうするのか、事前にきちんと答えを出しておかなければなりません。
そのために、Q&Aも含めて各試験会場でどうすべきかモデルを示しておく必要があるのだろうと思いますし、またそれぞれの大学ではシミュレーションも必要でしょう。
ーー最後に受験生へのメッセージをお願いします。
今年は残念なことに新型コロナウイルスというものがあって、受験生にはちょっと特別な年になりました。入試は私も含めて多くの大人たちも通ってきた道ですし、社会の中でも優先するイベントだということはよくわかっています。
なんとか実現できるように国も対策をしますし、我々専門家もしっかりと取り組んでいきたいと思っています。
もしかしたら、濃厚接触者になったり具合が悪くなったりして受けられないことがあるかもしれません。ただ、共通テストは2回め、3回めというチャンスも設けてありますので、みなさんが不利にならないようにしたいと思っています。
だから安心して勉強に専念してください。
受験を支える教員には、入試がきちんとできるように今一度、感染対策で何が重要なのか理解した上で、不当な対応や不当な差別によって受験生の機会が損なわれることがないようにしてほしいです。
最後に、流行が多い地域を受験生が行き来することもあると思います。
でも、受験生は飲み会をするわけではないし、カラオケで騒ぐわけでもありません。
リスクの高い行為をするわけではないので、地域の方達は受験生を信じて、温かい目で見守ってあげてほしいです。
みんなで冬と受験を乗り越えましょう。
by
岩永直子 BuzzFeed News Editor, Japan
バズフィードジャパンより
更新日時: 2021年2月 4日